入院中の暇つぶしに役立つこんなモノ

退屈な日々ではあるけれど、このような平凡な日々こそ幸せなんだと感じるのは、やはり自分が病気になった時でしょう。病院で治療する間に思うのは、健康になりたいという一心だけですが、今、考えてみると、あの日起きた交通事故は、私にとって災難というよりも、非日常を楽しむ充実した日々でもあった良き日々ではなかったのではないだろうかと思ってしまいます。
高速道路を走行中、後部座席でうつらうつらしていた私は、大きな衝撃を感じて目を醒したが、直後に強烈な不快感と吐き気を覚え意識朦朧としていたが、どうやら追突されたらしいとはわかっていた。後ろから追突してきた車は、なんとBMW、乗っていたのは、30代と思われる男性。当たり前かもしれないが顔を見たのはその時だけ、後は保険会社が全て請負って救急車に乗って、すぐに病院に運ばれ、コルセットをつけられて入院しました。吐き気は治まっていましたが、右の上半身、肩から中指の先まで痺れていて、ひどい不快感でいっぱいでしたが若い看護師の女性が、病衣に着替えさせてくれて、苦しい中でもちょっといい気分になって、これからの入院生活に備えました。100パーセント相手の過失だったので治療費は、全て保険会社が支払い、お金の心配は全くない。身体は痛かったがいい休養と思いました。
診断は頚椎捻挫。むち打ち症で全治三週間。整形外科病棟の六人部屋に入り、本格的な入院生活が始まりました。
妻に本を持ってきて欲しいと頼み、文庫本を4.5冊持ってきてもらいました。その中にあったのが奥田秀朗の"インザプール"で小説の中の登場人物と軽いタッチのストーリー展開に魅力を感じた。精神科医の伊良部一郎に会うために、人には言えない自分のさまざまな悩みを打ち明けに来る患者に対して、もてあそぶように先ずは注射をと指図する伊良部一郎、胸と太ももを見せながら注射を迫る看護師のマユミ、彼女の姿を想像しながら、私の着替えを手伝ってくれた生身の若い看護師の女性を重ねると何かウキウキしてしまう。現実の病院内でも同室の入院患者が伊良部を訪れる患者たちと重なって見えてくる時もある。
50代の向かい合わせのベッドにいた男性は、ジムの器具を使っている途中、大ケガをして運ばれてきた。何かジムに行かないと落ち着かないのだと言う、そしてランニングマシンで転んで腰を怪我して、運ばれてきたのだが治療の際には飛び上がって痛がる姿に、笑ってはいけないと思いつつ笑ってしまう、プールで泳ぐことに取り憑かれた男の姿と少し重なった。病院というある意味、世間で起きていることの縮図でもある空間は、今までも多くの小説やドラマの舞台にもなってきましたが、伊良部一郎と患者たちの物語は、死に向き合う家族や恋人たちの感動ストーリーや医師たちの権力争いとは趣きが違う。
人々が生きていて嵌っていく性癖や、身体の異常などユーモラスに語られて面白い。読むにつれて、なぜか自分の置かれた入院生活という状況も決して悪くはないかなと思わせてくれるそんな一冊です。

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